【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
「お気をつけて」
「はい」
そうして、松田さんとわたしは出会った場所──『milk*crown』で別れることになった。
手を振って見送ってくれる松田さんに何度も頭を下げながら、知らない街へと体を放った。
これ以上、嘘はつけない。
そう思ってのことだったのに、いざ離れると、どうにも心が苦しくて仕方がなかった。
罪悪感とはまた違う・・・・寂しさとか辛さとか、そういったものが、またわたしの胸を痛くした。
“後ろ髪を引かれる”とはよく言ったもので、振り返るたび、頭を下げるたび、どんどん離れずらくなる。
たった一晩だったけど、生まれてから一番の幸せだった時間が音を立てて崩れていくみたいで。
角を曲がると、わたしはその場にへなへなと座り込んでしまった。
「うっ・・・・うっ・・・・」
こんなに辛い思いをするのなら、ドールのままでよかったのに。
“人間になりたい”なんて夢を見たわたしがバカだったんだよね。
わたしは、あとからあとから流れてくる涙をどうにも止めることができなかった・・・・。