【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
 
◇◇◇



それからしばらくして、ようやく泣き疲れてきた頃。

やっとわたしはまた歩きだした。


行く場所も、目的地もない。

でも、ここから離れなきゃ。


幸いなことに、座り込んでいた場所は屋根の下だったようで。

服が少し汚れただけで、泥水といった目立つ汚れは避けられた。

大事なショップの服を汚してしまうところだったと思うと、泣く場所も少しは考えないと・・・・なんて思う。


「とにかく行かなきゃ」


今はショップから・・・・もう帰ったと思うけど、松田さんから少しでも遠くに離れなきゃ。

最後の嘘をついたじゃない、歩いて帰れない距離じゃない、って。





でも───・・。





「どこに行けばいいのよ・・・・」


初めて歩く街はひどく窮屈で、怖くて怖くてたまらない。

確かにわたしはここにいるのに、誰もわたしのことが見えないかのように感じてしまう。

今日は25日、クリスマス。

クリスマスカラーの街並みにわたしだけ取り残されているみたいで虚しくなった。
 

< 29 / 65 >

この作品をシェア

pagetop