【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
 
2年前、わたしはこのショップ、『milk*crown』に来たの。

シンプルだけど、着ると花が咲くように華やかになる、そんな不思議な魅力を持つ人気の店。


その日は雪だった。

ふわふわと白いものが体中に降りてきて、それが“雪”だってことを初めて知った。


すぐにショーウィンドウに飾られて、生まれたときから決められていたポーズを取って。

そうして、ショーウィンドウの内側から道行く人たちを眺める生活が始まった。




わたしの名前は───マネキン。




世間一般ではそう呼ばれている。

けれどわたしは、自分のことをこう呼ぶことにしているの。




───『ドール』




“マネキン”って呼ばれるのが好きじゃなくて、なんだかちょっとダサい気がして。

誰も呼んではくれないけれど、わたしはわたしをそう呼ぶの。


自分が“心”を持っているって知ったのは、たぶん、生まれたときだったと思う。

同じ顔、同じポーズ。

全部が同じ仲間たちの中で、わたしだけ違和感を覚えていたから。
 

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