【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
「あ、あの・・・・」
やっと少し声が出た。
でも、聞きたいことはいっぱいあるのにそれ以降は続かない。
ただ、バッグを持つ手に力が入っていくだけ・・・・。
「はい? ・・・・あー、気に入りませんか? そのバッグ」
松田さんは微妙な笑顔で言って、照れているのか手持ちぶさたなのか、ズボンのポケットに両手を突っ込んだ。
わたしは慌てて首を振る。
違うんです、松田さん。
どうしてあなたはわたしに優しくしてくれるの? ・・・・そう聞きたいんです。
すると、わたしの気持ちが通じたのか、松田さんはショーウインドーのガラスに背中を預け、独り言のように話しはじめた。
「昨日、初めて会ったときから不思議な人だなと思ってました。会ったこともないのに、なぜか毎日見ている気がして」
「・・・・」
「ずーっとね、思い出そうとしてたんです。道ですれ違った人かもしれない、ショップのお客様かもしれない、って」
「・・・・」
「でも、そうじゃないってさっき気づきました。本当はずっと、身近にいたんですね」