【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
 
そこでふっとショーウインドーから背中を離した松田さん。

ゆっくりと後ろを振り返り、納得の表情を浮かべながらまた話しはじめる。


「そうですよね。今日はドール、ここに立っていませんもんね。あなたはドール、なんでしょう?」


そう問うと、わたしに視線をずらし、ニコニコと笑った。


どうして・・・・?

どうしてわたしが自分のことをそう呼んでいるって知ってるの?


「薄々分かってはいたんです。ここは平和な街で、放火でもしない限り火事は起きません。というか、あの明るさは火事ものではありませんでした」


どうして・・・・?

分かっていたならどうしてわたしを一晩泊めて、バッグまで探そうとしてくれたの?


「それにあなた、いつもここに立っているドールの顔によく似ています。なんとなく・・・・何かを訴えかけるようなその目も」


嘘。

嘘だよ、そんなの。

なんで? どうして?

じゃあ、松田さんはわたしがドールだって気づいていながらいろいろ優しくしてくれたっていうの?

そんなの信じられない・・・・。
 

< 36 / 65 >

この作品をシェア

pagetop