【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
観念しようかな、わたし。
手を振り払って逃げようと思えば逃げられる・・・・それに、松田さんは逃がしてくれると思う。
でも、こうも穏やかな目で見つめられると、逆に逃げられる気がしてこない。
「あ、あのっ・・・・」
もう観念しよう。
「はい?」
松田さんの記憶に残れるなら、いつか思い出したときに嫌な記憶としてじゃなく残りたい。
“いい記憶”なんて、そんなわがままは言わない。
「あのっ・・・・」
せめて。せめて・・・・。
「はい?」
将来の奥さんとか、子どもとか、孫ができておじいちゃんになったときとか・・・・。
そういうときにわたしのことを笑って話せるような、不思議な出来事だったんだよって言ってもらえるような。
「あのっ・・・・」
そんな記憶になりたい・・・・。
「わたし、ドールとして生まれたときから心を持っていました」
全部、松田さんに話そう。
好きだってことも、サンタさんに1日だけ人間にしてもらったことも、全部。