【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
ドールの生活は、最初に思ったほど辛くはなかった。
新作をいち早く着られるし、ショップの人たちもわたしを優しく扱ってくれて。
ショーウィンドウの外側の女の子たちは、わたしが着ている服を見て店に入ってくれる。
年がら年中、同じポーズで肩こりにならないかな? そんな心配もしていたけど、ドールのわたしには全然関係なかったし。
確かに幸せを感じていた。
けれど、1年前───・・。
「今日からお世話になります、松田コータです」
彼が来てから全てが変わった。
松田さんにはお姉さんがいるらしく、その影響で『milk*crown』の服が好きになったという。
服飾の学校を卒業してのち、回り回ってこの店に来たらしい。
服のデザイン、素材選び、裁断や仕上げまで、服を作る一連の作業も自分でこなせる人で。
松田さんが着ている服はいつも個性的でおしゃれでセンスもいい。
かといって『milk*crown』で浮いているわけでもけしてなくて。
そんな彼に一目惚れだった。