【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
 
でも、わたしは───ドール。


話をしたくても話せない、動きたくても動けない。

彼について知り得る情報は、そのほとんどが店員同士の世間話からだった。

松田さんが接客していると、たまにお客さんのほうからプライベートな質問を受けることもあって。


「松田さんって、歳いくつ?」

「28です」

「うそ〜!もっと若いかと思ってた〜!あたしより10コも上だぁ」


・・・・歳上だって分かったんなら、敬語を使おうよ、そこの女子。


「じゃあ、彼女とかは?」

「いません」

「ほんと? カッコいいのにぃ。あたしがなってあげてもいいよ? なんちゃって」

「はは・・・・」


・・・・ダメダメ、絶対ダメ!


「じゃあ、また来るね〜!」

「ありがとうございました。またご来店ください」


・・・・もう来ないで!


ヒヤヒヤしたり、やきもちを妬いたり、彼女がいないことにほっとしたり・・・・。

気が休まらないことも多々。

松田さんって、要するにモテるのだ。・・・・それも、かなり。
 

< 5 / 65 >

この作品をシェア

pagetop