【クリスマス短編-2009-】クリスマス∞ドール。
でも、わたしは───ドール。
話をしたくても話せない、動きたくても動けない。
彼について知り得る情報は、そのほとんどが店員同士の世間話からだった。
松田さんが接客していると、たまにお客さんのほうからプライベートな質問を受けることもあって。
「松田さんって、歳いくつ?」
「28です」
「うそ〜!もっと若いかと思ってた〜!あたしより10コも上だぁ」
・・・・歳上だって分かったんなら、敬語を使おうよ、そこの女子。
「じゃあ、彼女とかは?」
「いません」
「ほんと? カッコいいのにぃ。あたしがなってあげてもいいよ? なんちゃって」
「はは・・・・」
・・・・ダメダメ、絶対ダメ!
「じゃあ、また来るね〜!」
「ありがとうございました。またご来店ください」
・・・・もう来ないで!
ヒヤヒヤしたり、やきもちを妬いたり、彼女がいないことにほっとしたり・・・・。
気が休まらないことも多々。
松田さんって、要するにモテるのだ。・・・・それも、かなり。