秘密の放課後
「ん、僕?柊 那月だよ」
「ひいらぎ なつき?」
「こう書くんだよ」
男はメモ帳を取り出してすらすらと名前を書いた。
“柊 那月”
へぇ、キレーな名前。
「キレーな名前でしょ?僕のお祖母ちゃんがつけてくれたんだ」
柊はへへっと笑った。
「そうですね…あの、柊さんは…」
言いかけた私の口を、柊さんは人差し指で抑えた。
「“那月”でいいよ」
顔を近づけてふふっと笑った。
サラサラの茶髪が、私の顔にふわっと触れた。
見た感じでサラサラなのはわかってたけど、本当にサラサラだ。
多分私の髪よりサラサラ。
「那月ですか?…わかりました、那月って呼びます」
「ありがと」
ふふっと微笑む度に、髪がサラリと揺れる。
髪が頬に触れてくすぐったい。
「で、なぁに?」
「へ?」
「聞きたいこと、あるんでしょ?」
あ…そうだった。
「なんで、私に声をかけてきたんですか?」
私が聞くと、那月は苦笑いした。
「ん…実は、聞きたいことあるんだよね…」