*スケッチブック*
「ハール、まだ帰らないの?」

後ろを見ると、親友の亜沙子ちゃんがいた。


「うん。これかいてから帰ろうかな、って…」

そう言ってスケッチブックを軽く傾けるわたし。



「じゃあ、先に帰ってるね」

にこっと笑うと、亜沙子ちゃんは、教室の方へ向かって行った。




フワッと風が吹き、髪がアゴの下で揺れる。
前髪も、ふわりと揺れる。





わたしは、ここで、
彼と出会うことをまだ知らない。


『運命は、勝手に交差してくれるんだよ』

お母さんが言ってた気がする。



わたしは未来を知らない。
でもそれでいいんだと思う。




< 5 / 10 >

この作品をシェア

pagetop