この想いを君に… −あの場所へ−
食事が終わり、帰る父さんを玄関先まで送ってから、クルリと体をこちらに向けた真由は俺を見つめて

「そーちゃん」

少し低いトーンの声で俺を呼んだ。

「ご飯、今からでもいいから食べようね。
みんなの前が嫌なら部屋で食べさせてあげるから」



真由は気がついていた。

俺がもう、スプーンやフォークさえも持つことが出来ない、という事を。



「…わかってたの?」

情けない。

涙が出そうなのを必死で抑えた。



「そーちゃん、私達何年一緒にいると思うの?」



そう言って真由は俺の車椅子を押した。
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