この想いを君に… −あの場所へ−
『光くん見てよ〜!!』

20代の頃。

よくパラソル持ちをしていた時、レースが終わって俺に顔を近付けて

『シミがぁ!!』

半泣きで訴える。

総一さんに高い化粧品をねだっても、まず、却下されるから先に俺に言ってくる。

『門真さん、真由ちゃんうるさいー』

付き纏う真由ちゃんがあまりにもうるさいから、総一さんに訴えると、苦笑いしながら

『真由〜、1個だけ買ってあげるから』

そう言って片付けに忙しい俺から真由ちゃんを引き離した。



もう、遠い昔の話。



まだあの頃は良かった。



今じゃ疲れきって。

肌の状態も良くない真由ちゃんが門真さんの介護ベッドの隣で。

今まで二人で寝ていたベッドに一人、寝ている。



可哀相。

そんな安っぽい言葉でこの状態は表現出来ない。



本当に…本人だけでなく家族までもが残酷になっていく病気だ。
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