この想いを君に… −あの場所へ−
「へえー、凄いね」

パパは嬉しそうにテレビを見ていた。

「今月末から流れるんだって!!」

僕が言うと

「楽しみだね〜」

そう言って微笑んだ。

「本当なら」

パパは僕を真剣な眼差しで見つめて

「この手が動くなら抱きしめたい。
…ごめんね」



そんな事、言われるなんて思わなかった。



「じゃあ、泰樹がパパを抱きしめたらいいじゃない?」

ママがそんな事を言う。

パパにしてもらうのはいいけれど…

自分からするなんて恥ずかしい。

「泰樹、そうして?」

パパもそんな事を言うから。

僕はそっとパパを抱きしめた。

「良かったね、泰樹」

パパの温かさが少しだけ伝わってくる。

やっぱり…体温が低い。

知樹がしきりに言うから気にしてたけど。

抱きしめてわかる…



パパは弱々しい笑みを僕に向けて

「この先、どんな曲を出すのか楽しみだよ」

そんな事を言うけれど。

楽しみなら…

その時まで、生きてよ、ねえ?
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