この想いを君に… −あの場所へ−
「昔…高校時代。
智道のお母さんと俺は付き合っていたんだ」



私も智道くんも顔を見合わせて目を丸くした。



「沙織は昔から写真が好きでよく俺を撮りにサーキットへ来ていたよ。
まだその頃は隆道と沙織は顔見知り程度で」

その話の中のパパは私が全く知らないパパだった。

「高校を卒業してすぐのレースで俺は事故をした。
サーキットへ行けない間、隆道と沙織は仲良くなっていて…
沙織は俺と隆道の間で迷っていた。
また隆道も沙織の事が好きになっていた」



パパは苦笑いをする。



「お互い惹かれ始めている、そのパワーは計り知れない。
そんなパワーに俺は勝てない。
沙織は迷うだろうから俺が身を引けばいいと…俺は沙織に別れを告げた。
それが一番良いと思った」



パパは淡々と言った。



智道くんの顔が青ざめていくのがわかる。



「…隆道はいいヤツだよ。
隆道が陽なら俺は陰。
沙織は優柔不断な所があるから明るくてハッキリしている隆道の方がいいんだ。
俺じゃ、二人ともダメになる」



しばらく沈黙に包まれた。
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