この想いを君に… −あの場所へ−
「俺も一緒に行こう」

そーちゃんのお父さんも来た。

俺達は3人で先に戻る。





「睦海」

車の中で俺は言った。

「こんな事を言うのは不謹慎かもしれないけど…」

睦海は助手席でずっと泣いていた。

「そーちゃんが子供の中で一番可愛がっていたのは睦海、お前だよ」

更に泣き声が大きくなる。

「自分の本当の子供よりも…
大切だったんだ」



俺も父ちゃんが死んだ時にそーちゃんに言われた。

父ちゃんは兄ちゃんより俺を可愛がっていたって。

決して兄ちゃんが憎い、とかそんなんじゃなくて。

俺は本当の両親を知らなかったから。

愛情をかけるという事がどういう事か。

特に教えたかったのだと。

またそーちゃん自身、睦海に対しても血より濃い愛情がある、とその時言っていた。



「それは俺も同じだよ」

そーちゃんのお父さんが言った。

お父さんと言っても血は繋がっていない。

でも、そーちゃんを大切にしていたのはよく知っている。



「…パパに恥をかかせないように。
精一杯、生きていけ」

睦海が頷くのが何となくわかった。



俺は必死に目を開けてるんだけど。

雨も降ってないのに。

やたらとフロントガラスが曇って。



…そーちゃん、ごめんだけど後で一人、泣いていい?
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