この想いを君に… −あの場所へ−
そーちゃんが家に着いたのは午後8時過ぎ。

そして仮通夜。

10時以降は光さんに任せて俺は家に帰った。



「あーあ」

母ちゃんは俺を見るなり、ため息をついた。

「そーちゃんまで先に逝っちゃったよ」



母ちゃんは。

本当の子供を失い、父ちゃんも早くに亡くなって。

そして子供同然のそーちゃん。



「みんな置いてくんだから…」



そして俺を睨むなり

「あんたは私の最期を看取るんだよ、わかった?」

母ちゃんなりの、悲しいという表現だった。



「…ハイハイ」



俺は手をヒラヒラさせると一人、ベランダに出た。

隣の家は人の出入りで忙しい。

それをぼんやりと眺めながら先々の事を考え始めていた。
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