この想いを君に… −あの場所へ−
「なあ…」

夕食が終わって洗い物をしている梓のすぐ近くの椅子に座り、俺はもうすぐ2ヶ月になる楓を抱きながらあやしていた。

「俺…時と場合によっては引退するかもしれない」

そう言った瞬間、楓がぐずり始めた。

俺は立ち上がってあやす。

「…引退?」

梓は蛇口を止め、振り返って俺を見つめた。

「うん…、多分そーちゃんは来年、監督を降りると思う」

そしてお店の事も。



父さんが病に倒れた時、まだ現役だったそーちゃんがお店の店長とライダーと監督の掛け持ちをして…

倒れた。

さすがに、今はチームには将来有望なライダーが2人いるから。

そんな事は出来ないけど、確実に交代の時は迫っている。
< 54 / 417 >

この作品をシェア

pagetop