この想いを君に… −あの場所へ−
「祥太郎」

そーちゃんは呆れ返れるような仕種を見せると

「お前、何歳になっても…泣き虫だなあ」

「…うるさい」

慌てて涙を拭く。

「でも、来期のチーム監督はお前に任せるよ。
…プレッシャーはあるかもしれないけど、俺の体がたとえ動かなくなったとしても、口が動けばアドバイスは出来る」

そーちゃんの目は決して未来へ絶望している目ではなかった。

「体は動かなくなるのは間違いない。
でも、俺の意識までが遠退く訳じゃない。
大丈夫、死ぬまで傍にいるから」



うん、うん。

そーちゃんは決して。

俺達を突き放したりしない。

それはわかってる。



でも、その体が動かなくなって、一緒にお客さんのバイクやレースのマシンを触れなくなって。

そこに一緒にいられなくなるのが、悲しい。
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