【短編】淫らに冷たく極上に甘く
彼がここにいる理由も私に構う訳も、まったく何も分からない。
なのに、結局着替えて一緒にいる私って……。
ため息を漏らしながら、雪に足を捕られないように俯いて歩いて着いていく。
言うこと聞かないと本当に襲いかねない男だし。
あのキス事件があったわけだから、私の考えもつじつま合うし納得がいく。
はぁー。
吐き出した息が雪の色と同化して消えていく。
空から舞い降りてくる雪は朝からずっと降り続いていて、辺り一面はいつまでたっても雪で覆い尽くされていた。
「ほら、手貸してみ?」
立ち止まって振り向いた彼は、偉そうに上から目線でそう言った。
そんな言葉を無視して先を歩いていこうとすると、
「フッ。恥ずかしくて自分からは繋げないって?」
「誰が!! って、ちょっと手、離して……よ」
……何で?
どうしてそんな顔してるの?
私は絡められた手を離すタイミングを逃してしまった。