【短編】淫らに冷たく極上に甘く
だけど、彼は笑みを浮かべてすぐに顔を逸らし、私を引っ張って再び歩き始めた。
……あれっ?
こうして手を繋がなかったら気付かなかったかも。
それくらい自然にさり気なく、歩幅を合わせてくれてる。
さっきも今も。
何だか、見た目もよくてこんなことされたら、大抵の女はオチルんじゃないかって思う。
突然キスしてきた失礼なヤツで、強引に連れ出したヤツ。
なのに、何だか急に意識しはじめる。
さっきから、私、オカしい……。
「……クシュン!!」
「ったく。ほらっ」
手を離した彼はフワリと、自分のマフラーを私に巻いてきた。
グルグル、グルグル、これでもかってぐらい。
彼の体温に包まれてしまうかのように。
「雪国育ちなのに寒がりでよく風邪ひいてたくせに、マフラーぐらいしてこいよ」
そしてまた、当たり前のように手を繋いで歩きだす。
「し、白崎くん!!」
「何?」
彼は一体……
何者?
「何でそんなこと知ってるの? それに何で構うの? 何で名前で呼ぶの?」
聞きたいことは山ほどある。
私だけ知らない何かがあるみたいでモヤモヤする。
「そんないっぺんに聞いたって答えられるかよ」
彼はフッと笑って私を見下ろして、頬に手を当ててきた。