【短編】淫らに冷たく極上に甘く
「あー、平気平気!! 同じ高校の子も何人か来るし。ってかね、みんなアイちゃんに会いたいって思ってるからさ」
「……え?」
ちょっと待って?
今、萌も“アイちゃん”って言った?
どういうこと?
「ういーっす! お待たせ」
「遅いよ圭次!!」
「どうせみんな集まってないだろ……って、君が噂のアイちゃん? 初めまして、俺は圭次、同じ高校だしよろしくな」
私の目は更に点になって開いた口が塞がらず、ペコリとお辞儀しながらも頭の中は混乱していた。
何でこの人までアイちゃんって知ってる、の?
それから数人の男女が来るも、みんな私のことを”アイちゃん”って呼んで、ますます意味が分からなくなってきた。
それを問うタイミングも掴めずに呆然とする。
アイちゃんって知っているのは、ここでは彼だけ……あの写真に映っている彼、だけなはず……。
「ねぇー、アイちゃん!!」
「あ、繭紀ー“アイちゃん”って呼んでるとヤツに怒られるよ」
「アハハッ、だねー。えっと」
萌に言われて笑ったその子につられて、みんなも集まって笑いだして、
「葵でいいよね?」
「あ、うん」
それからは“アイちゃん”って呼ばれることはなかったけれど、疑問は更に深まるばかり。