【短編】淫らに冷たく極上に甘く
「お前ら、何、人の悪口言ってんだよ?」
それはもういいタイミングで、噂の的がやってきた。
そして、予想通りの人……。
「春斗遅いし!! まったく、学校じゃ優等生気取ってるくせに、本当はこんなルーズなヤツだもんねー」
「うるせー。お前らの前でまで猫被れるかよ。で、何の話してたんだよ?」
「えーっ。言って、いいの?」
「言え」
萌の頭を掴んで髪をぐしゃぐしゃにして、二人が楽しそうに話している姿を見ていると、
「あ、れ……?」
ズキズキと胸が痛んできた。
何で?
私、傷ついてるの?
そこには優等生でもなんでもない素の“白崎春斗”がいて、萌もここにいるみんなも昔からの友達で本当の彼を知っていて、それは当たり前のことなのに。
嫉妬して、る?
私しか知らないって、特別なんだって、勝手に思い込んでいて。
これじゃあ私……
彼に恋してるみたいじゃない。
「ったく、いいから言えって」
彼のそんな言葉の後、彼の隣にいる萌と目が合って、彼に気付かれないようにウインクをしてきた。
そしてクスクスと笑いながら、話し始めた言葉に私の胸の鼓動は急激に加速していくのであった。