【短編】淫らに冷たく極上に甘く
――時は立ち、みんなでボーリング場へとやって来た。
驚いた彼はあれから一切私と目を合わさず、何だか気まずい空気が流れていた。
話し掛けることもできなくて、今までと違った冷たい態度にどうすることもできず、やっぱり胸が痛む。
「葵ちゃん、俺とペア組もうぜ」
「えっと、圭次くんだっけ」
男女ペアですることになったボーリング。
カップルもいるみたいで、それぞれ思いのままにペアを組んでいたところ、圭次くんが私の肩に手をかけて微笑んできた。
「うん、私、下手くそだけど……いい?」
実はボーリング未経験な私。
申し訳ない気持ちを抱えながら返事をすると、
「ダメ」
肩に乗っていた手が払い除けられた。
今の声って。
「白崎くん……」
私と圭次くんの間に立って、圭次くんを見下ろしながら睨んでて。
「やーっと見せたな。素直になれよ、春斗?」
「……チッ」
軽く舌打ちした彼はそのまま入り口に向かって歩きだし、
「ちょっと春斗ー、どこ行くんだよ」
「悪ぃー、俺抜ける」
片手を上げて、ボーリング場を出ていった。
「……やりすぎたかな」
「だね、反省」
「ごめん、葵。あいつ多分照れてるだけだから、追ってあげてくれない?」
萌にそう言われた時には、私は考える間もなく自然と足が動いてて、その場を走り去っていた。
追い掛けて何を言うのか。
そんなことを考える余裕もなく。
ただ、白崎くんが気になって気になって、どうしようもなかった。