Spring
　その後は各自頼んだものを食べながら雑談をした。

　中村先輩は見た目通り頭が良いらしく、今度数学を教えて貰う事になった。

先輩はやっぱり、優しい人だった。

笑った顔や、前に寝呆けて階段を踏み外した事件について松永先輩にからかわれた時の恥ずかしそうに笑った顔。

その全てに、なんだか身体が暖かくなった。

　三時間くらい話をして、六時になりそろそろ解散しようと言うことになり、店を出る。

｢寒い…｣

　暖房の効いた店内を出ると冷たい風が肌を撫でる。

｢大丈夫？｣

　マフラーを口元まで巻いていると、隣に来た中村先輩が心配そうに顔を覗きこんできた。

｢だ、大丈夫です｣

　失態を見られたような気がして恥ずかしくなる。寒さだけじゃない頬の赤みを隠すようにマフラーに顔を埋める。

ちらっと先輩をみると、やっぱり笑ってた。

その笑顔がなんだか可愛いなって思う。

｢あ〜！公一が保菜美ちゃんを口説いてる！！｣

｢！！｣

　松永先輩と佳子がニヤニヤと笑いながら前からこちらを覗きこむようにしてからかってきた。


結局、その後は先輩たちと別れるまで二人にからかわれることに。


｢じゃあ、また遊ぼうね〜｣

先輩たちと別れて、私の家の前で佳子に手をふり別れる。

　佳子の背中を見送って家に入るとき、別れるときに見た先輩の笑った顔が浮かんできて、自然に笑みをこぼしていた。

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