茜色―菜の花畑―
「な、なんで?」
『何でって憂菜がこっちに来るの見えてたし。隣に来た瞬間はビックリしたけど、あー、パン探してんだなってすぐに分かったよ。』
あたしはとっさにあることに気付いた。
「茜だってビックリしてんじゃん!!」
『………』
すると茜は少しキョトンとした後、
『今つっこむべきところ…違くね?』
そう言うのも限界だったのか、ぶはっと吹き出して大笑いし始めた。
そんな茜を見てると何故かつられて笑ってしまった。
とても懐かしい時間が戻ってきた気がした。
『憂菜。』
「ん?」
笑うのをがまんしながら振り向くと
『はい、これ。』
茜がパンを差し出してきた。
『え…このパンあたしが貰っていいの?』
「うん。俺は弁当買うし。それに憂菜クロワッサン好きだろ?」
「覚えてたの?」
『まあね。』
確かにあたしはクロワッサンが大好物だ。母さんが弁当を作れない時や3時のおやつには決まってクロワッサンだった。
幼馴染みである茜は知ってて当たり前だが、まさか覚えているとは思わない。
あたしは思わず顔が赤くなっている事に気付かれないように俯いてレジに向かった。