運命の歯車-不思議の国のアイツ-
(・・・いっそのこと、やってしまうか?)
一瞬、ジュンの頭にその考えが浮かんだが、すぐに打ち消す。
今のジュンの背中には、大事な彼女が隠れている。
その彼女を背負って、喧嘩など出来たものではない。
ただ、だからといって、喧嘩をしないで見逃してくれるとも思えない。
(万事休す・・・・だな。)
ジュンは、唇の端を噛む。
どうにかして、彼女だけでも、逃がしてやりたいが、この男達10人に囲まれた状況では、それもうまく行きそうになかった。
ジュンの背中には、彼女が不安そうに、ジュンの服を掴んでいるのが感じられた。
「おい、紅蓮は、女連れ相手に喧嘩すんのかよ?」
ジュンは、一か八かで、聞いてみる。
「・・・・・」
ジュンの言葉に顔を見合わせる男達。
「女連れで喧嘩なんか出来るわけないだろ?・・・こいつだけ、見逃してくれたら、すぐに喧嘩してやるよ。」
ジュンの言葉に、男達が、小声で話す。
そして、「まぁ、女に用はないからな。行っていいぞ。」と、ジュンに告げた。
(・・・・最悪の状況は、避けられそうだな。)
ジュンは、男達の言葉に、一安心して、後ろを向いた。