運命の歯車-不思議の国のアイツ-
第3章:それぞれの月夜
第1節:アヤ
コウがジュンを助けて数日後のある夜。
夜空に浮かぶ満月。
いつもの月より大きく、そして優しく輝いていた。
そんな月の見守っている夜、アヤは、御薗グループのトップである父親に呼び出されて、一流フレンチに食事に来ていた。
普通の感覚ではありえない高級ドレスに身を包み、偽りの笑顔を浮かべて、父親のいるテーブルに向うアヤ。
(なんて現実感のない世界・・・)
父親のいるテーブルに向う間、ふと店内を見渡して、アヤは思った。
ほぼ満席の店内では、すべての人が、この世の中の幸福をすべて集めたような笑顔をしていた。
しかし、アヤには、その笑顔が、この上なく汚れた笑顔にしか見えず、むしろ、悪寒を感じる。
(・・・・・気持ち悪い。)
素直なアヤの気持ちだった。
そんなことを思いながら、アヤは、父親のいるテーブルの席に座る。