運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「アヤ、元気だったか?」
席に着くなり、父親が優しそうな笑顔で笑いかけてきた。
(元気だったか?・・・・・よくそんなセリフが出てくる・・・・・)
アヤは、心の奥底で父親を侮蔑したが、それを表情に出すようなことはしなかった。
「ええ、お父様。」
アヤは、偽りの笑顔を浮かべた。
そもそも、娘が元気かどうか尋ねる父親の神経がどうかしていると思う。
そんなに心配なら、家に帰ってくればいいだけの話だ。
「そうか。」
アヤの父親は、アヤの笑顔に安心したようにつぶやいた。
「ところで、今日は、何の御用ですか?」
アヤは、作った笑顔のまま父親に話しかけた。
「そんなに急がなくてもいいだろう。まず、食事をしてからにしよう。」
アヤの父親が、合図をすると、すぐに前菜が運ばれてきた。
「さあ、いただこう。」
父親の言葉で、アヤは、料理に手をつけた。
その料理は、アヤの想像通り、アヤにとっては、感情のない味だった。