運命の歯車-不思議の国のアイツ-
第5章:壊れた歯車
第1節:リョウ
リョウは、電車に乗って、地元から少し離れた一軒のケーキ屋の前に来ていた。
「スゥ~・・・ハァ~・・・・・」
深呼吸をするリョウ。
ひとりでケーキ屋に入るのは、初めての経験だった。
緊張して、手のひらに汗をかいているのを感じる。
ケーキ屋の前の道を通り過ぎる人が、奇妙な目でリョウを見ていく。
さすがに、15分もその状態でいれば、注目を集めないわけはなかった。
しかし、そんな注目を浴びていることさえ、気づかないくらいの緊張度だった。
「ずっと、そこに立ってるけど、何か用か?」
ケーキ屋の中から店主らしい男性が出てきて、リョウに話しかけてきた。
「あっ、その・・・」
いきなりのことで、緊張して言葉が出てこないリョウ。