運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「・・・なんでマサヤが、紅蓮の奴を・・・。」
コウは、うめくようにつぶやく。
「・・・私が、マサヤくんの前であんなこと言っていたから・・・。」
別にマイに尋ねたつぶやきではなかったが、マイが答えた。
「・・・・・・・・・・・いや、そうじゃないよ。」
コウは、少し考えた後で言った。
「・・・でも・・私が・・・。」
「違う!・・・これは、海堂のせいじゃなくて・・・・俺のせいだ。」
コウの携帯電話を握った右手には、今にも携帯電話を握りつぶしそうなほどの力が入っており、携帯電話が、ミシミシと嫌な音を立てていた。
「・・・や、山下くん?」
携帯電話越しの異様な雰囲気にようやく気付いたマイが、コウを呼ぶ。
「・・・俺が、マサヤより早く紅蓮を潰しておけば・・・・。」
コウの表情は、今までしたことのないくらいに苦渋に満ちていた。
「・・・みんなにも、伝えた方がいいかな?」
コウの異様な雰囲気に、やや言いにくそうにマイが言葉を発した。
「・・・いや、今は、言わない方がいいよ。」
リョウに手伝ってもらえば、どんなに心強いことはなかったが、今のリョウとアヤの状況では、それを頼むことはできなかった。
そもそも、この話にリョウとアヤは、関わっていない。
それを、こんな状況になったからといって、リョウとアヤを巻き込むのは気が引けた。