運命の歯車-不思議の国のアイツ-


「・・・なんでマサヤが、紅蓮の奴を・・・。」



コウは、うめくようにつぶやく。



「・・・私が、マサヤくんの前であんなこと言っていたから・・・。」



別にマイに尋ねたつぶやきではなかったが、マイが答えた。



「・・・・・・・・・・・いや、そうじゃないよ。」



コウは、少し考えた後で言った。



「・・・でも・・私が・・・。」



「違う!・・・これは、海堂のせいじゃなくて・・・・俺のせいだ。」



コウの携帯電話を握った右手には、今にも携帯電話を握りつぶしそうなほどの力が入っており、携帯電話が、ミシミシと嫌な音を立てていた。



「・・・や、山下くん?」



携帯電話越しの異様な雰囲気にようやく気付いたマイが、コウを呼ぶ。



「・・・俺が、マサヤより早く紅蓮を潰しておけば・・・・。」



コウの表情は、今までしたことのないくらいに苦渋に満ちていた。



「・・・みんなにも、伝えた方がいいかな?」



コウの異様な雰囲気に、やや言いにくそうにマイが言葉を発した。



「・・・いや、今は、言わない方がいいよ。」



リョウに手伝ってもらえば、どんなに心強いことはなかったが、今のリョウとアヤの状況では、それを頼むことはできなかった。



そもそも、この話にリョウとアヤは、関わっていない。



それを、こんな状況になったからといって、リョウとアヤを巻き込むのは気が引けた。

< 211 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop