運命の歯車-不思議の国のアイツ-
カプッ・・・
そんなアヤの気持ちを察してか、リョウは、軽く、アヤの耳たぶをアマガミすると、愛おしそうにアヤの耳から唇を離し、アヤのあごから右手を離し、普通の姿勢に戻った。
「・・・これは、約束じゃねぇ・・・命令だ。」
リョウは、そう言い残して、屋上を後にしようと歩き始めた。
「・・・・リョウ!」
リョウが、屋上から室内に戻るドアに手を掛けたところで、それまで無言だったアヤが、リョウの背中に声を掛けた。
アヤに背中を向けたままで立ち止まるリョウ。
「・・・いつもの待ち合わせのように遅れたら・・・待たないわよ。」
アヤは、うれしいような、哀しいような、不思議な表情を浮かべていた。
「・・・1時間前から待っていてやるよ。」
結局、アヤの方を振り返らないまま、リョウは、静かにそう言って、屋上を出て行った。
そのリョウの後ろ姿をアヤは、目に焼き付けていた。
まるで、もう会えない人の姿を焼き付けるかのように、しっかりと。
この時、2人は、確かに同じ道を見ていた・・・。