運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「・・・・蒼炎のジンさんには、頼めないのか?」
コウも、ジュンに言われるまでもなく、そのことは、何度も浮かんできていた。
しかし、以前とは状況が違う。
この件にジンさんを巻き込むのは、危険なのだ。
マサヤが、事件を起こしたことで、もし、今、紅蓮と目立つ抗争を起こせば、蒼炎の総長であるジンが、警察に捕まる確率は、以前よりはるかに高い。
今、紅蓮は、爆弾のようなものなのだ。
近づくものをすべて巻き込んでしまう。
そして、ジンには、アユミがいる。
この大事な時期にジンが警察に捕まり、アユミひとりが残されるという最悪の状況は・・・。
そこまで考えて、コウは、ジンに頼めないのだ。
「・・・ジンさんは、・・・駄目だ。・・・あの人は、頼めば、何があろうと、必ず助けてくれる・・・。だからこそ、あの人は、巻き込めない。」
苦渋の表情でコウは、ジュンを見た。
「・・・そうか。」
ジュンは、コウの表情からジンに頼めない理由があることを悟った。
それ以上は、ジンの名前は出さなかった。
「なぁ、ジュン?」
ふいにコウが、ジュンの名前を呼んだ。
「何だよ?」
「ジュンって、いわゆる東三鷹中の番長とかいう奴だろ?」
「・・・ああ。」
少し恥ずかしそうにうなずくジュン。
今時、番長という響きが恥ずかしかったのだろう。
しかし、それ以外に表現のしようがないので、しょうがなく肯く。