運命の歯車-不思議の国のアイツ-
第1節:青いバラ
イギリスの有名な理論物理学者であるスティーヴン・ホーキングは、言った。
時間順序保護仮説によって、過去に戻るタイムマシンは、不可能であると。
しかし、世の中には、過去に戻る物語が溢れかえっている。
それは、人の願望。
いや、欲望なのだ。
人の知性が生み出すものが、願望なら、人の本能が望むものが、欲望。
タイムマシンは、ありえない。
そのことを、スティーヴン・ホーキングのように人類最高の知性を持ち、理論によって信じることができたら、どんなに幸せだろうか・・・。
そして、今日もまた、人は、タイムマシンを本能で望む・・・。
叶わぬ夢と知りながら・・・。
日曜日、午前中は、やや小雨がパラついていたが、午後には、その雨も上がり、空を覆った黒い雲からは、太陽の光が差し込み出していた。
リョウの勤めるケーキ店も、午前中は、客足が、まばらだったが、雨が上がり、午後になると、日曜日らしいお客の入りになった。
もともと、店が始まってしまうと、厨房の中にいたリョウは、それほど、忙しいわけではないが、今日は、むしろ忙しい方が、リョウには、ありがたかった。
とにかく、時間が過ぎるのが遅く感じるのだ。