運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「だったら、無難にバラなんていかがですか?バラに、はずれなしって言いますし。」
「へぇ~、そうなんですか?」
「まぁ、私が言っているだけなんですけど。」
花屋の店員は、小悪魔的な笑みを浮かべた。
「ははは。」
リョウに、思わず笑みがこぼれた。
普段は、こんな世間話的な会話で笑うリョウではなかったが、やはり、アヤとのことで機嫌がよかったのだろう。
「冗談は、これくらいにして、実際、バラの花言葉は、愛や美というのも含まれていますし、何より見た目だけでなく、匂いもいいですよ。・・・1本の値段も花の中では高いですしね。」
やはり最後に皮肉を込めた言葉をつける店員。
しかし、リョウは、悪い気はしなかった。
「それじゃ、バラを3本ください。」
「色は、赤でいいですか?」
店員の言葉に肯くリョウ。
しかし、そんなリョウを見ていた店員が、急に思い出したように店の奥へと入っていった。
そして、手に1本のバラを持って出てきた。
「それも、バラ?」
店員が、1本だけ持っていたバラは、花に詳しくないリョウにも、何か違和感を与えた。
「バラですよ・・・造花ですけど。」
店員の持っていたバラは、青い色をしたバラだった。
「へぇ~、そんな色のバラもあるんだ。」
珍しそうに造花の青いバラを見つめるリョウ。