運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「いわゆる不可能の色だったバラです。」
「不可能だった?」
リョウは、店員の言葉に首を傾げる。
「はい。残念ながら、ちょっと前に、ある企業が、青いバラを作っちゃったんですよね。」
「それが、残念?」
「私個人の意見ですけど、何でも可能にすればいいわけじゃないと思うんですよね。それまでは、不可能なことの象徴だった青いバラを、現実に作ってしまうことにどんな美しさがあると思います?不可能だからこそ、青いバラの神秘性が増すのであって、現実に青いバラを見ると・・・こんなもんかって思っちゃいますよ。」
リョウは、花屋の店員の言葉に妙な説得力を感じた。
確かに、現実には、できないものだったからこそ、青いバラに神秘性が加味されて、人々の興味をそそるのであって、現実に作ってしまっては・・・。
「ところで、何でその青いバラの造花を?」
「・・・なんか、お客さんを見てたら、赤いバラより青いバラが似合っているような気がして・・・。あっ、あくまで深い意味はなくて、色的にってことですよ。・・・よければ、赤いバラの真ん中にこの青いバラを入れようかと思いまして。」
店員は、リョウの目を見て微笑む。
「・・・青いバラか・・・。花言葉は、あるんですか?不可能とかだったら、ちょっと遠慮しようかな・・・。」
リョウは、店員が、あそこまで批判していた青いバラを入れることに抵抗を覚えた。
花言葉が、不可能とかだったら、縁起でもないことこの上ない。
「ふふっ、それが、実際に青いバラができるまでは、花言葉は、不可能だったんですけど、できちゃったら、変わったんですよね、花言葉が。」
「花言葉が、変わった?」
「そうなんです。青いバラの花言葉は、【夢かなう】です。」
「夢かなう・・・かぁ・・。入れてください。」
リョウは、満面の笑みで店員に言った。
まさに、青いバラの花言葉は、今のリョウとアヤにぴったりの花言葉だった。