運命の歯車-不思議の国のアイツ-
そして、リョウの予想したとおり、マサヤを見ていた、リョウの目の前でそれは起こった。
リョウとマサヤの距離は、直線距離で30メートル程度。
ただ、駅という場所柄、その30メートルの間には、多くの人々が、行き交っている。
一瞬、行き交う人々が、リョウの視線から、マサヤを隠した。
そして、次、リョウの瞳にマサヤが、見えた時には、マサヤは、体つきのいい、スーツ姿の男性2人に囲まれていた。
その瞬間、リョウの頭の中から、それまでの考えは、遥か彼方に飛んでいってしまった。
「マサヤ!どうした!」
リョウは、人ごみを掻き分けて、一直線にマサヤの元へと駆け寄る。
リョウの声に気付き、マサヤは、駆け寄るリョウを見た。
リョウの瞳に映ったマサヤの瞳には、動揺が、ありありと浮かんでいた。
怯えているマサヤ。
リョウには、マサヤを取り囲んでいる大人の男2人を敵とみなすには、十分すぎる理由だった。
「マサヤに何してんだ、こら!」
リョウは、右手に持っていたケーキの箱を花束を持っていた左手にまとめて持った。
そして、空いた右手で、思いっきり、マサヤを囲んでいた体格のいい男の肩を背中から思いっきり引っ張った。
いきなり、リョウに背中から肩を引っ張られて、男は、その場で1回転するようにして、リョウの方へ振り返る。