運命の歯車-不思議の国のアイツ-
その振り返った男の手が、運悪く、リョウの左手に当たった。
その拍子にリョウが、左手でまとめて持っていたケーキの箱と花束が、リョウの左手から離れて空中へと飛んだ。
リョウの瞳には、まるでコマ送りのように、ケーキの箱と花束が、空中を飛び、そして、コンクリートの地面へと落ちる様子が映った。
多くの人々の行き交う駅の構内の出来事である。
コンクリートの地面へと落ちたケーキの箱と花束は、次の瞬間には、いきなりのことで止まることの出来なかった人の足に踏まれて、あっという間に、無残な姿へと変貌していた。
「・・・誰だ、君は?邪魔だから、離れていなさい。」
リョウの左手から、ケーキの箱と花束を弾き飛ばした男は、そんなことは、まったくお構いなしに、リョウに冷たく言い放った。
リョウの瞳に、炎が宿る。
誰にも消すことが出来ない高温の青い炎だった。
ドカッ!!!!
リョウの右手の拳が唸りを上げて、ケーキの箱と花束を弾き飛ばした男の顔面を捉える。
男は、リョウの拳が当たった鼻から血を吹き出したが、その場からは、一歩も動かなかった。
「・・・公務執行妨害だな。逮捕!」
鼻から血を流しながら、男は、冷静に言った。
そして、あっという間に、周りから現れた5人の男にリョウは、地面に倒され、這いつくばらされた。