運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「離せよ、こら!!!」
うつぶせにコンクリートへと押えつけられたリョウが、叫ぶ。
しかし、リョウの背中に乗っている男達は、リョウを離そうとはしない。
「くそ!!」
リョウが、必死に体をどうにかして起こそうとするが、できなかった。
そして、リョウの目の前では、マサヤが、哀しそうな目でリョウを見下ろしていた。
そのマサヤの両手は、鉄の輪がつけられていた。
「・・・手錠?・・・何でマサヤが?」
マサヤが手錠をつけられた光景を見て、ようやくリョウは、冷静さを取り戻した。
「こちらも、逮捕していいんですよね?」
リョウの背中に乗っていた男が、鼻から血を流している男に話しかけた。
「ああ、公務執行妨害だ。それに、どうやら友人らしい。事件の関係者かもしれない。」
「了解しました。」
無感情な男達の会話の後に、リョウは、自分の背中に両手を回され、そして、抵抗むなしく、手錠をはめられた。
「な、何なんだよ、これは・・・。」
ようやく、冷たいコンクリートの地面から引き起こされたリョウが、状況が飲み込めずつぶやく。
(俺は・・・アヤを待っていたんじゃなかったのか?)
リョウは、混乱していた。
「こい。」
リョウに手錠をはめた男が、リョウの手錠を持って、リョウを歩くように促した。
「ちょ、ちょっと待てよ?何で、俺が手錠はめられてんだよ!俺は、ここにいなくちゃいけないんだよ!!」
リョウは、必死に抵抗するが、結局、3人の男達に無理やり運ばれて、駅の外に止められていた覆面パトカーの中に乗せられた。
後部座に乗せられたリョウの両側を、体格のよいスーツ姿の男達が乗る。
そして、覆面パトカーは、リョウを乗せて駅を離れていった。
後に残されたのは、駅の構内を行き交う人々に踏まれ、無残な姿になったケーキの箱と中身のショートケーキ、そして、夢かなうの花言葉を持つ青いバラだった。