運命の歯車-不思議の国のアイツ-



アヤが、リョウとの待ち合わせの駅に到着したのは、3時ちょうどだった。



駅の構内は、どこか落ち着きのないざわめきが起こっていたが、駅に到着したばかりのアヤには、人々のざわめきが、何に対してのざわめきか、分からなかった。



(・・・リョウ、約束どおり、1時間前にいるでしょうね?・・・フフッ。)



アヤは、少しの期待を持って、約束の1時間前に駅に来たのだ。



アヤの手には、小さめのボストンバックが、握られていた。



中には、最低限の生活必需品が入っていた。



新しい生活を始める上で、もっと多くの荷物を持って来るべきだったのかも知れないが、今までの生活との離別を決意するために、最低限の荷物で済ませたのだ。



ただ、リョウとの新生活に、不安がまったくないわけではなかった。



アヤは、もともと、何も考えずに前に進めるほど、熱い性格をしているわけではない。



どちらかといえば、しっかりと考えた上で行動する派だった。



しかし、今は、リョウの熱い想いに何も考えず飛び込もうと決心していた。



それは、若さゆえの過ちかもしれない。



いや、そういうことを頭から追い出して、振り返らず、前だけを見ようと。



ただ、リョウと共にいられることだけを考えたのだ。

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