運命の歯車-不思議の国のアイツ-
そんな決意のアヤの瞳に、駅の冷たいコンクリートの上で無残に人々に踏まれる青いバラが、映った。
「・・・造花?」
アヤは、青いバラを手にとり、見つめる。
青いバラの周りには、赤いバラの残骸と思われるものが落ちていたが、青いバラだけは、造花だったので、その姿を保っていたのだ。
「・・・フフッ、珍しい・・。」
アヤは、笑顔でその青いバラを見つめて、ポケットへとしまいこんだ。
「・・・青いバラなんて、私、今日、運がいいかも・・・。」
それから、アヤは、駅の構内の壁際で最終の電車が出るまで、ずっとたたずんでいた。
約束の時間を1時間過ぎてからは、アヤの笑顔は、消えていた。
無表情で、ただ来ないリョウを待ち続けるアヤ。
今日、父親との約束があったので、何度も父親から携帯電話に連絡があったが、アヤは、それに一度も出なかった。
「・・・すいません。最終が出たので、駅を閉めたいのですが?」
アヤの待っていた駅は、通り抜けできないため、最終が出ると駅を閉めてしまう。
駅員が、最終が出ても、動かず、壁際に立ち続けるアヤに声を掛けてきたのだ。
「・・・・。」
アヤは、無表情で駅員の言葉に肯くと、駅の外へとトボトボと歩き出した。