運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「・・巻き込んで悪かったな、コウさん。」
レイジが、コウに声を掛けた。
この日曜日までにコウは、レイジと一緒に紅蓮のメンバーのところを回っていた。
仲間になるように説得することが目的であったが、当然、それは、当初より、難しかった。
そのため、コウ達の強さを説得する相手に見せる必要があったのだ。
ただ、レイジは、残念ながら、喧嘩はあまり強くないので、説得する相手とのタイマンの場合は、コウが相手をしたのだ。
コウは、その全てに勝った。
そして、コウの強さに納得した奴が、今、コウ達の仲間として、この場所に集合しているのだ。
その一連の中で、いつの間にか、レイジは、コウのことを「さん」付けで呼ぶようになっていた。
年齢的には、レイジの方が、完全に上だったが、そんなことは、関係ないと言わんがばかりにレイジは、コウさんと呼んだ。
コウは、やめてくれと何度も言っているのだが、一向にレイジは、聞いてくれないのだ。
しょうがなく、コウは、レイジのコウさんという呼び方を受け入れていた。
「・・・気にするなよ。」
コウが、レイジに掛けた声は、そのかもし出す雰囲気とは違い優しかった。
コウは、気にするなよと言ったが、これは、少しおかしかった。
元々、この状況に巻き込んだのは、コウであり、レイジではない。
しかし、そんなことなど関係ないといわんばかりの上下関係が、コウとレイジの間では、すでに形成されていたのだ。