運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「あ~・・・みんなにとって、紅蓮って何だ?ただの暴走族のひとつか?それとも、好きに暴れることが出来るから、いるだけか?街で大きい顔が出来るから、名前だけ入っているだけでもないよな?」
コウの言葉に全員が耳を傾けている。
そして、まるで、空もその時だけは、コウの言葉に耳を貸すように、雨足が弱くなってきた。
「不良ってなんだ?・・・不良は、普通の人達からの道からは、確かに外れている。だけど、不良には不良の信じる道があるはずだ。・・・弱い奴からカツアゲすることや、ヤクを俺達の街にばら撒くことが、紅蓮の不良としての道なのか?・・・もし、そうだとしたら、俺は、紅蓮を潰してしまおうと思っていた。」
雨が、完全に上がり、周辺には、雨音も止まり、コウの声だけが響く。
「・・・だけど、紅蓮も今は、間違った道を歩んでいるが、それに苦しんでいる奴もいるってことに気付いたんだ。・・・苦しんでいるなら、俺が、助けてやる!・・・不良としての・・・いや、紅蓮としてのプライドを取り戻そう!・・・今、この瞬間から俺達が・・・紅蓮だ!!紅蓮の名を貶めた連中を潰すぞ!!!」
オオオオォォォォォォォォォォォ!!!!!!!
地響きのような声が、駐車場を包み込む。
そして、雨のあがった空からは、一瞬の雨雲の切れ間から、月の光が、コウをスポットライトのように照らした。
「ついて来い!!!」
ワアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!
もはや絶叫としか言いようのない声だった。
今、確かに彼らの目には、コウが、新たに誕生した不良のカリスマとして映っていた。
今、この瞬間から彼らにとっての紅蓮は、コウになった。