運命の歯車-不思議の国のアイツ-
ザアァァァァァァァァァァァァァァ・・・・・・・
一時止んだ雨が、地上で起きたことを全て洗い流すように再び、降り始めた。
そして、その雨の中、ドーナツ型になった若者達の中心には、コウが、一人、立っていた。
コウの体からは、まるで、熱くなった鉄にいきなり水を掛けた時のように雨が蒸発して、白い煙を上げていた。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
コウの息は、かなり荒かった。
しかし、コウのその視線の先に倒れている男から目を離そうとはしなかった。
コウの目の前の地面には、紅蓮4代目総長が、苦しそうにうめき声を上げながら、倒れていた。
コウ達の戦いは、最後、コウと紅蓮4代目総長とのタイマンになっていた。
そして、コウが、ついに、4代目総長を殴り倒したのだ。
コウは、ひたいを切って、顔の半面は、血だらけになっているが、4代目総長は、それ以上に酷い顔面になっていた。
「・・・終わりだな、コウ。」
コウを取り囲んできた円の中からジュンが、コウの元にやってきた。
ジュンも、先ほどまで、幹部連中と大乱闘を繰り広げていて、顔面は、血だらけで、服にも飛び血がついていた。
「・・・ああ・・・俺達の勝ちだ。」
倒れた4代目総長を睨みつけていた目をジュンへと移す。
その瞳は、すでに、いつものコウの優しい瞳に戻っていた。
「俺達の勝利だぁぁぁぁ!!!!」
レイジの声が、雨の打ちつける駐車場にこだまする。
オオオオォォォォォォォォォォォ・・・・・。
あたりは、歓喜に包まれた。
コウとジュンは、その様子を見つめながら、一瞬だけ、笑みを浮かべると、歓喜の輪には加わらずに、すぐにどこかへ行こうと歩き出す。
「どこへ行くんだよ、コウさん?」
コウが、立ち去ろうとしていることに気がついて、レイジが、コウに声を掛けた。
そして、レイジの言葉を聞いた歓喜で騒いでいた紅蓮のメンバー達に静寂が、広がっていった。
全ての視線が、コウに注がれている。