運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「・・・それは、違うよ、リョウ。いくら喧嘩に勝ったからって強いことにはならないよ。本当の強さは、そんなことじゃないんだよ。」
コウが、真剣な目でリョウを見つめた。
「・・・・まったく、コウは、たまに意味がわからないこというんだよな。・・・まぁ~、今日は実際・・・助かったよ。俺でも、あの人数は、きつかったしな。・・・アヤが、待ってるから。じゃ~な。」
リョウは、話の途中で、コウの会話を切り上げて、歩き始めた。
「リョウ!あんまり、無茶すんなよ。」
リョウの背中に声をかけるコウ。
そのコウの声に後ろを向いたまま、右手を上げて応えて、リョウは、去っていった。
全員が去って、コウだけになった体育館裏は、先ほどまで乱闘が行われていた場所とは思えないほど、静まりかえっていた。
コウは、ひとり体育館裏にたたずみ、空を見上げて、独り言をつぶやく。
「・・・・俺、間違ってないよな、ルミちゃん・・・・」
そして、しばらく空を見ていた後で、コウも体育館裏を後にした。