運命の歯車-不思議の国のアイツ-
第6節:コウとジン
コウは、ひとりで体育館裏から家への道のりを歩いていた。
夕方の道は、帰宅を急ぐ社会人や学生が足早に歩いている。
コウも、そんな人々の中に紛れていた。
道路も渋滞寸前の交通量。
そんな中で、歩道を歩いていたコウのすぐ横の道路の端にいきなり一台のバイクが止まった。
何気なく、そのバイクを見るコウ。
そして、バイクに乗っている人物に気づいて、足を止める。
コウの後ろを歩いていた社会人が、いきなり止まったコウにぶつかりそうになるが、寸前でよけた。
寸前でよけた社会人が、コウに文句をいいたそうな表情になるが、中学3年にも関わらず、かなりの長身のコウを見て、すぐに目を逸らして、そのまま歩いていった。
(・・・・俺、そんなに危なそうな奴か?)
コウは、心の中で苦笑いをする。
コウ自身は、自分のことを不良と思ったことはなく、なぜ、他人がコウをそういう目で見るのか、イマイチ理解できないというのが本音だった。
「よう!コウ、久しぶりだな!」
バイクに乗っていた男が、バイクを降りてコウの側まで歩いてきた。
「ジンさん、お久しぶりです。」
コウは、人懐っこい笑顔を浮かべて挨拶をする。