運命の歯車-不思議の国のアイツ-
写真の母親は、いつものように優しい微笑みを浮かべていた。
数日泣き続けたマイには、すでにお葬式の時には、涙も枯れ果てていた。
目の回りは、見れないほど赤く腫れあがり、そしてほとんど食事もとっていないために、頬がこけてる。
「マイ、少し休んでいていいよ。」
父親が、マイの体調を心配し、優しく声をかける。
「・・・」
マイは、無言でうなずき、お葬式の会場を後にする。
その歩いている最中に噂話が聞こえてきた。
「知ってます。海堂さんの奥さんをはねた車を運転していたのは少年で、しかも薬物をやっていたから、無罪になるみたいですよ。」
「本当?・・・それじゃ、やってられないわね、海堂さんのご家族も。」
「そうですよね。しかも、海堂さんの旦那さん、警察関係者だから、余計に悔しいでしょうね。」
マイは、途中まで、その話に耳を傾けていたが、すぐに再び歩き始める。
無罪だろうが、有罪だろうが、あの優しかった母親が帰ってくることはない。
今のマイにとっては、どうでもいい内容の話だった。