運命の歯車-不思議の国のアイツ-
「何でですか?山下先輩、彼女いないんでしょ?」
付き添いの女の子が、怒った様子でコウにつめよる。
(・・・何で断るのに理由がいるんだよ・・・しかも、その理由を説明する必要がどこにある。)
コウのムカつきは、最高潮に達しようとしていた。
「・・・・今、誰かと付き合うつもりはないから。」
コウは、どうにか心の中の怒りを抑えて答えた。
「それじゃ、意味がわかりません。彼女いないんだったら、試しに付き合ってみてもいいじゃないですか!」
付き添いの女の子は、完全に興奮して話しかけてくる。
(試しにって・・・そういうもんじゃないだろ。)
コウは、女の子だけじゃなく、男の友達にも、よく、この試しに付き合ってみればいいという言葉をかけられた。
付き合ってみたら、意外と気が合うかもしれないし、逆に、どんなに好きでも、付き合ってみたら、合わないかもしれない。
だから、試せるなら、試した方がいいと。
コウにも、言っている意味は理解できた。
ただ、理解できたからといって、それを受け入れるかどうかは、別の話だった。
コウにとって付き合う人は、アクセサリーではない。
ちょっと付き合ってみて、気に入らないところがあるから、アクセサリーのように別の物に交換しようと気軽に言えるものではなかった・・・・少なくとも、コウにとっては。
まともに付き合ったことのない奴の戯言と他の奴は、コウの考えを聞いて思うのかもしれない。
しかし、コウは、それでも別によかった。