妹彼女Ⅱ
「や、きら君!水汲みかい?」

川の縁、流れが緩いところに、水江さんが両足を浸けて座っていた。

軽くポリタンクを持ち上げて、あいさつのつもり。


「や。どしたの?」

タンクの口を川底ギリギリに付け、溜まるのを待つ。

料理するのにジャマだったのか、短めだった髪をなんとかまとめ、ゴムで留めていた。

捲ったジャージから見える白く細い手足が、妙にかわいい。


「さっきちょっと転んだら、少し足が痛くなってね。海くんにカレーできるまで足冷やしてろってさ。」


初日に崖から落ちて足ケガしたやつが再発したのか。

海の班は川に一番近く、ここからでもよく見えた。

他とは違う、圧倒的な手際の良さで野菜を切り、進行状況はトップ。



風羽 海、正直初めて見た時は、同い年の人間とは思えなかった。


完璧なまでのルックス、先生を驚かせる程の頭の良さ、緊張を知らない物腰、部活生を凌駕する運動神経。

妹の空もさることながら、こいつには一生勝てないだろうなと思っている。


「海…か。ホント、あいつはすごいなって思うよ…」

「そうだね、海くんは…うん、いろいろとすごいよ…」


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