【天の雷・地の咆哮】
ばたばたと鳥たちが一斉に枝から飛び立ち、梢がざわざわと揺らめいた。
太陽が翳ったのか、それとも鳥たちの陰に入ったのか、急に辺りが薄暗くなった。
痛みに顔をゆがめるニュクスは、そのまま男の体の下敷きにされる。
「おどきなさい!この無礼者!」
体中の勇気を振り絞ってあげた声は、かすれた涙声だ。
「へへへ。綺麗な肌じゃねぇか。
こんな柔らかい肌は、初めてだ」
男の鼻先が首筋に触れ、ニュクスの肌がぞくりとあわ立った。
経験はなかったが、何をされるかくらいの知識はある。
辱めを受けるくらいなら。
ニュクスがその決意を固めたとき、別の男が口を開いた。
「ケレス。ここでやっちまう気か?」
盗賊の頭の名前は、ケレスというらしい。
ケレスは、ん?というように顔を上げる。
「ここじゃまずいぜ。襲った馬車もそのままにしてあるし、気づいた人間が人を呼ぶかもしれん」