【天の雷・地の咆哮】
「なんだ、やけに素直だな」
文句の一つでも返ってくると予想していたのだろう。
ロカは、わずかに虚をつかれたように二度瞬いた。
「ちょっと思うところがありまして、素直になろうと心がけていますから」
ヴェローナを見習って、という言葉は、あえて飲み込む。
・・そこまで物分りのいい女になるには、まだ若すぎるもの。
ニュクスは、久しぶりにロカの蒼い瞳に正面から見つめられた気がした。
「そうか」
唇から呟きを漏らすのとほぼ同時に、ロカは立ち上がり、ゆっくりニュクスとの距離を縮める。
『お前“も”ほしいのか』
確かにロカはそう言った。
つまり、ヴェローナの産んだ子の父親が誰であれ、
ロカの中ではすでに自分の子どもとして認めるつもり、ということだ。